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2019年7月13日、上田きよし埼玉県知事と、大野もとひろ参議院議員の対談が実現した。16年に渡る上田県政が実現してきた実績を振り返り、これからの埼玉を担う次世代の県政へのビジョンを語った。

県民と力を合わせて16年

大野 埼玉県知事として重責を担ってこられたこの16年間。振り返ってみて、いかがですか?

上田 県民の皆様のお力添えをいただき、大変充実した気持ちで16年、知事を務めることができました。「経営の観点を取り入れ、民の力を生かす」という2つの柱によって、高校生の中途退学、不登校の生徒数の減少や1000社以上の企業誘致、県民の所得やGDPをあげるといった多くのことを実現することができました。ひとえに県民の皆様のご協力あってのことと、大変感謝しています。

大野 本当に多くの政策を実現されたと思いますが、特に思い入れのある政策を一つ上げるとしたら何でしょうか。

上田 「みどりと川の再生」と銘打った、森林と河川の再生です。特に「水辺再生100プラン」により、2008年度からの4年間で100か所の水辺の再生を実現し、2012年度からは「川のまるごと再生プロジェクト」に17の川で取り組みました。
県民の方でも意外に思われるかもしれませんが、埼玉県は県土面積に占める川の面積が日本で一番大きい。「川の国埼玉」といっても過言ではないくらいなのですが、私が知事になるまで、アユが棲める水質の河川は52%でした。

大野 確かに私も幼少期には川遊びに行った記憶はありますが、その時の記憶といえば川辺に空き缶やビニール袋などが散乱していて、とても汚いイメージが残ってます。

上田 その当時は「埼玉県の川は美しい」という印象を持てなかったのも無理はありません。川の再生を掲げ、取り組み始めて約10年という歳月の中で、川が整備、浄化されました。今ではアユが棲める水質の河川は89%となり、名実ともに「川の国埼玉」と胸を張れるようになりました。
川の再生事業には、多くのボランティアの方々のご協力もありました。地域で川の清掃活動や環境保全活動、水生生物調査、子供向けの環境学習などに取り組む「川の国応援団」は県下の全市町村に拡大し、670を超える団体が埼玉の豊かな水辺を守るために活動しています。県庁は活動資材の貸し出しや環境学習への講師派遣などによって活動を支援し、県民はもちろん、日本にとっても貴重な財産である埼玉の豊かな水辺を、次代に引き継ぐ体制を整えてきました。

大野 行政だけでなく、県民参加だからこそ「川の国」を誇れるのですね。限られた予算の中で最大限の効果を生み出すのが上田知事らしいやり方ですね。とりわけアユの生息率が、格段に上がったことは凄いですね。今後も次の世代のために継続してもらいたいですね。

犯罪数が3分の1に減少!

上田 この16年間で埼玉県内の刑法犯認知件数も大幅に減少しました。私が知事に就任した当時、埼玉県の認知件数は約18万1千件(2004年)。他県よりも認知件数の増加率も高かった。これを何とかしなければということで、その後の15年間で約6万件にまで減少させたのです。

大野 16年で3分の1にまで減少するとは驚きです。どのような施策を講じたのでしょうか。

上田 埼玉県は人口が増え続けており、人口10万人当たりの警察官の数は全国でワースト。しかし警察官を増員することは知事の権限ではなく、国の権限なのです。そこで県民の力をお借りしようと考え、民間防犯パトロール団体「わがまち防犯隊」の増加を掲げました。「県内で1万団体を目指そう」と明言して、今では約6千団体にまで増えました。この団体数は全国2位の東京都を大きく引き離し、日本一なんです。いかに県民の防犯意識が高いか、おわかりいただけると思います。

大野 「わがまち防犯隊」による青色防犯パトロール車や、「コバトン」の絵の入ったミニパトカーによる巡回を見たことがある人も多いかもしれませんね。

上田 見回りに参加されている方も多いですよ。パトロールの効果が最もあるのが住宅侵入窃盗だそうです。犯罪件数が多いと警察官はその対応にかかりきりになり、パトロールを行う余裕がなくなり、だから犯罪が増えるという悪循環になります。しかし「わがまち防犯隊」の見回りが増えたことで犯罪が減り、警察官もパトロールを十分に行えるようになった。それによってより犯罪が減るという、好循環が生まれました。

大野 まさに知事の掛け声による官民の連携によって、犯罪件数が3分の1にまで減少し、県民の大きな安心が守られているのですね。

医師の確保は県民生活の急務

上田 16年の間には解消しきれなかった課題もあります。埼玉県は人口10万人当たりの医師の数が、全国で最も少ないのです。医師の確保に対策を講じ、医師の数そのものは約12000人と全国9位なのですが、県民人口がそれを上回る速さで増加してきました。しかし、直近の10年間でいえば医師の増加数は全国6位、2年間に限って言えば増加数は全国2位と善戦しています。

大野 そうした声をよく耳にします。また産婦人科や小児科などの拡充も急務ですね。

上田 おっしゃる通りです。医師は増やそうと思って急に増やせるものではありません。埼玉県では医師の不足及び偏在の解消のため、医学生の奨学金制度によって県内勤務医師を確保する努力を続けています。
医大を卒業したのちは、県内の臨床研修病院や特定地域で臨床研修を受ける、もしくは医師の少ない地域で7年勤務していただくなどの条件で、奨学金返済を減額・免除する制度です。医師不足と同時に、もう一つの大きな課題である医師の偏在も解消しようという試みです。この制度は2010年に始まり、2016年にようやく最初の医学生が研修医になったところですから、今後の成果に期待したいですね。

大野 この制度は県民だけでなく、医学部志望の若者にとっても有益です。志がありながら、学費の高さによって医学部への進学が難しい状況にある若者に、ぜひ活用していただきたい制度です。「医師を増やす」という人材確保の面に加え、救急医療情報システムの拡充や、隣接する県との医療協力、遠隔地のオンライン医療・施薬支援を組み合わせるなど、いろいろなことができそうです。埼玉県内では秩父市(旧大滝村の区域)、小鹿野町、東秩父村、神川町(旧神泉村の区域)が過疎地域に指定されていますが、これらの地域では医師の偏在は住民の生命に直結します。速やかに、できうる限りの対策を講じる必要があります。

上田 大野さんが防衛大臣政務官の時、所沢の防衛医大に看護学部設置を決定してくれましたね。今後も、さまざまな角度から拡充に努めてもらいたい。それが県民の願いでもあります。

県庁舎建て替えよりも子供たちの施設を

大野 平成の地方自治体においては、「財政再建」や「行財政改革」が叫ばれてきました。この点についてはいかがでしょうか。

上田 無駄な事業によって赤字を垂れ流すことは許されません。私自身も「最小・最強の県庁」を目標に行財政改革を進めてきました。ITを活用した事務処理の電子化や業務の民間委託などによって人員削減を進め、2003年度に8146人だった知事部局一般職員の定数は、2018年度には6730人となりました。ところが、先日行われた県庁舎の建て替えを議論する県議会特別委員会では、建て替えありきの議論が進められているようです。県民のニーズに耳を傾けることなく、結論ありきで進んでいくとなれば、これは順序が違うのではないでしょうか。

大野 上田知事は就任直後の2004年の新潟県中越地震を契機とした県庁舎の建て替え問題で、建て替えではなく耐震改修工事をすることを決断されました。建て替えであれば約420億円、耐震改修工事ならば約50億円という試算があり、知事は後者を選んだ。

上田 あの時、県庁舎の建て替えを行わなかったことで、県立小児医療センターと県立がんセンターの建て替えがスムーズにできたのです。他にも、家庭環境の影響などにより生活指導の必要な児童たちが入園し、自立を目指す児童自立支援施設の埼玉学園も、建物の老朽化が進んでいます。県庁よりも、建て替え、あるいは建築が県民に強く望まれている施設がたくさんあります。

大野 同感です。私のいとこの子供は知的障害を抱えており、特別支援学校へ通っています。しかし自宅から距離があるため、通学に毎日片道1時間かかっているそうです。
障害の種類に応じた特別支援学校はあれど、数は充分とは言えません。特別支援学校だけでなく、保育施設や病児保育施設など、待機児童解消のために必要とされている施設がいくつもあります。私は血税を元にした限られた予算ですから、県民の立場に立った優先度に従い県庁舎の建て替えも判断しなければならないと考えています。「必要なところに、必要な予算」ですね。

上田 大野さんは企業経営の経験もお持ちですから、私以上に「民の力」を活かして埼玉の未来への投資をすすめてくれるものと期待しています。

医療で、防災で、生活で、技術が生きる埼玉に

上田 いま、世界は非常に速いスピードで進んでいます。例えば5Gと言われる新世代の移動通信システムや、全てのものをインターネットにつなぐというIoTの発達。これらがこの先どのような社会をもたらすのか楽しみである一方で「AIの進歩で、人間は仕事を奪われる」といった悲観論もあります。

大野 私はむしろ、テクノロジーが弱者を救う社会にしなければならないと考えています。例えば高齢ドライバーの事故が問題になっていますね。コンパクトシティを形成し、生活圏を歩ける距離に配置すれば自動車を運転する必要が減りますし、高齢者の孤立を防ぎ、社会のきずなで支えることもできます。このような措置を講じてもなお、そこに居住できない高齢者向けに自動ブレーキ車の普及を支援するなど、きめ細かい対応が必要と思います。コンパクトシティがさらに、IT、IoTで結ばれたスマートシティになれば、災害情報の提供にとどまらず、電気の使用状況などを離れた地点で把握できますから、高齢者のご家庭の状況変化を把握することもできます。新しい技術を介すことによって解決できる部分はたくさんあります。

上田 テクノロジーとの共存は、私より若い世代の政治家にとって最大のテーマになるでしょう。大野さんはまだ55歳とお若く、テクノロジーにも明るいので、機械にはめっぽう弱い私も心強い(笑)。

大野 ありがとうございます。テクノロジーの発展により、人と人との交流が乏しくなる、人間性が排除されるとお思いの方も多いかもしれません。むしろ使いようによっては、高齢者の見守りや社会での子育てなどの極めて人間らしい役割を果たし、「誰もが安心して暮らせる」社会の実現に貢献すると考えます。政治家がこのような社会をビジョンとして示し、官僚を納得させられるかは、やはり知見と経験にかかっています。豊富な政治の経験に基づき行政を主導できる知事ならば、テクノロジーを使いこなすのも容易だと思います。

上田県政の継承と発展。そして、日本一暮らしやすい埼玉へ

上田 今、埼玉にはいい風が吹いています。今年9月6日には、ラグビーワールドカップ2019の日本代表対南アフリカ代表の壮行試合が熊谷ラグビー場で行われます。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、県内4会場で5競技が開催されます。県民の皆様に、世界最高峰のアスリートたちをぜひ直に見てほしい。次世代の世界レベルのアスリートが、埼玉から生まれるきっかけにもなるでしょう。

大野 県民の皆さんも、そのような風を感じているのではないでしょうか。年明けすぐには映画『翔んで埼玉』に注目が集まりましたが、2024年度上期から使用される新一万円札の肖像も、深谷市出身の渋沢栄一翁に決まりました。
私も参議院議員として、ベンチャー企業を育成する「渋沢栄一創業プロジェクト」の創設を提案してきたので、感慨深いものがあります。

上田 この風が長く吹き続けるかどうかは、これからの埼玉を牽引するリーダーにかかっています。大野さんは参議院議員として、数々の議員立法を起案するなど政策提案にも定評がありますね。未来の埼玉のために、いまどんなことをお考えですか?

大野 埼玉の暮らしやすさを更に向上するために、「あと数マイルプロジェクト」として、東京都と埼玉県の境まで来ている公共交通の延伸を実現したいと考えています。
埼玉高速鉄道の延伸にも全力を尽くしますが、舎人ライナーを草加市まで、都営大江戸線を東所沢まで、多摩都市モノレールを所沢まで延ばせば、通勤はもちろん、生活全般における県民の交通の利便性がぐっと高まります。川越、秩父、飯能などへの観光客も増加している今、たくさんのアイディアを実現し、さらなる「いい風」を埼玉に呼び込みたい。

上田 素晴らしい提案ですね。私はこの16年間で、埼玉県の「基礎体力」を向上させたという自負があります。大野さんには、この体力を引き継いで新たな課題に挑戦していただき、埼玉のさらなる発展を期待したいと思います。

大野 上田県政を引き継ぎ、「日本一暮らしやすい埼玉」を実現していきたいと思います。今日は長時間、ありがとうございました。


上田きよし埼玉県知事(全国知事会会長)
経歴:早稲田大学大学院政治学研究科大学院在学中(1976年)、新自由クラブの立党に参画する/1975年、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了/1979~1986年、建設大学校(現・国土交通大学校)の非常勤講師を務める/1993年、第40回衆議院議員総選挙・旧埼玉県第5区にて初当選/2000年、第42回衆議院議員総選挙にて3選/2003年、埼玉県知事選にて初当選